こんにちは、お久しぶりです。
アニメ記事はMyGO!!!!!以来ですね。
ようやく書けるようになったというか、ようやく「これは記事を書きたい!」と思える作品がやってきたという気持ちの変化です。
今回は2024春アニメから『響け!ユーフォニアム』です。
ついに、ついに、来てしまいましたね。久美子3年生編。
この作品は私の中でも特に思い入れの強い作品でして。というのも、私がアニメをガッツリ見るようになったきっかけの作品の1つだからです。今でも5本の指に入るほど好きな作品です。
だからこの作品の続編を見られるというのはとても嬉しい気持ちなのですが、同時に寂しくもある。これが終わってしまったらもう新しいユーフォは見られなくなってしまうんだと思うと、既にもう泣けてしまう。つらい。
というわけで3期1話を見るのもやや出遅れてしまったのですが、覚悟を決めてようやく見ました。
響け!ユーフォニアム、最高!
もうとにかく最高です。ファンサービスが特盛りで叫ばなかったシーンが1つもない。
3期1話の感想をそのまま書いてもよいのですが、せっかくなので私がいつか書こうと思っていた、ユーフォ1期1話のモチーフのお話と関連させてみようと思います。
順行と逆行について
お気づきの方も多いとは思いますが、3期1話のアバンで登場したモチーフの多くが1期1話から輸入されたものでした。
1期1話のアバンでは「始まり」を連想させるようなモチーフが多く出てきますが、それと同時に「戻る」ことを連想させるモチーフも出てきます。
本記事ではそれぞれ「順行」と「逆行」というように表現したいと思います。
具体的には、1期1話では「順行」は久美子が「吹部と近づく方向に進むこと」、「逆行」が久美子が「吹部から離れる方向に進むこと」ということになると思います。
物理的か、精神的かは、場合によりけりです。
1話なのに「逆行」というのは少し違和感があるかもしれませんが、それはちゃんと物語と対応していて、特に主人公である黄前久美子の心象を表しているといえます。
では、以降では具体的にどんなシーンなのかを挙げてみます。
まずは1期1話のお話です。
1期のモチーフ
1期1話のお話、覚えていますでしょうか。久美子は中学(大吉山中学校)で吹奏楽部に所属しており、府大会でダメ金を取った。その結果を見て泣いていた麗奈に「よかったね」というと「悔しくって死にそう」「私ら、全国目指してたんじゃないの?」と返される。それに対して「本気で全国行けると思ってたの?」とノンデリ発言をかます。
久美子は高校では同じ中学の子が少ないという理由で北宇治高校に入学した。北宇治高校の吹奏楽部は特に強くなくて、中学の子、すなわち吹部で同じだった子たちの多くは他の吹部が強い高校に行っているということである。
そこで久美子は、当然吹部の強い高校に行っていると思われた麗奈とまさかの再会を果たし、さらにそこで知り合った川島緑輝(以降、緑)や加藤葉月に誘われるがままに、悩んだ末に吹部に入部することになります。
前置きが長くなりましたが、重要なのは久美子が「悩んだ末に吹部に入部した」という点です。
「響け!ユーフォニアム」というくらいなので、ユーフォを吹いていた久美子が吹部に入るというのはメタ的に言えば当然なのですが、久美子には吹部入部に対して絶妙な葛藤があったことが読み取れます。その葛藤は「順行」と「逆行」のバランスで成り立っている。そしてそのバランスは、後述する『地獄のオルフェ』のシーンの前後で大きく変化することになる。
以降では、それらのシーンを具体的に示していきます。
信号
わかりやすいものだと、信号が「順行」のモチーフになっています。
久美子が吹部の見学に行き、麗奈と再会したあと、緑と葉月と一緒に帰る途中の場面です。
信号が赤から青になって、なんだか「始まり」だとか「スタート」を連想させるシーンになっていますね。順行のモチーフです。順行側にバランスが大きく傾きます。
少し話がズレますが、ここで信号を赤から青にしたのは、ボタンを押した「緑」であるということにも注目したいです。色の話ではなく。
このときの緑のセリフで「緑は(吹奏楽)やりますよ。音楽が好きですから」というのがあります。緑のこの精神は久美子に少なからず影響を与えていると思います。
というのも、1期12話で姉の麻美子と言い合いになるシーンがありました。
「音大行くつもりないのに吹部続けてなんか意味あるの?」と言われて、それに対して久美子は「あるよ!だってわたし、ユーフォ好きだもん!」というセリフを返しました。
ということもあって、「好き」という気持ちが吹奏楽への原動力になるマインドを伝えた緑が、久美子の吹奏楽の再開に寄与している部分は少なからずあると思います。
(色の話もありそうです。信号の青は実際、「緑」色ですし、緑輝という名前は何かを輝かせる、照らすようなイメージを連想させます。月永求がやたら懐いているのもそれと関係があるかもしれません。)
改札 (帰り)
続いて、改札のシーンです。先ほどの信号のシーンでは、赤信号から青信号になっていて、順行側のバランスが強くなっていましたが、ここで少し、逆行側に傾きます。
帰りの電車の改札を通るときに久美子は葉月に声をかけられる。
「久美子は?」「どうする?吹部」
と尋ねられると久美子はワンテンポ置いてから「ちょっと...考える?」と答える。
このとき、改札の途中で止まっていること。これが重要です。
先ほどまで、青信号の点灯によって順行側に傾いていた天秤が、逆行側に傾く。
3期になった今でこそ、そうは思えませんが、久美子が高校で吹部に入るまで道のりはとんとん拍子ではありません。
とにかく葛藤があります。順行と逆行を載せた天秤が揺れ動く。その葛藤がこのシーンに表れている。
絶妙な葛藤をこういった日常的なシーンで描いてしまうのがユーフォの凄いところだと思います。
電車 (帰り)
電車の進む向きは時間の向きや登場人物の心象を表すことがあります。
動画のシークバーなんかがわかりやすいと思いますが、右に行くほど時間が進む。
また、それは前向き後ろ向き、+と-、ポジティブとネガティブのイメージなんかとも対応して、おおざっぱに右がポジティブ、左がネガティブみたいなイメージがあります。
今回でいうと、右が「順行」で左が「逆行」ということになります。
その流れでいくとこのシーンは「順行」ということになります。
葉月や緑に説得されて気持ちは順行側に傾きつつある、つまり吹部入部の方へ向かいつつある。
しかし、この電車、下り方面電車なんですね。
こちらは久美子たちが乗っている京阪宇治線の路線図です。
久美子と葉月の家の最寄り駅は宇治駅で、黄檗駅→宇治駅は下り方面の電車です。
上り方面と下り方面の電車が対応すると考えると、「上り方面」が「順行」で、「下り方面」が「逆行」だと思うんですね。
そう考えると、このシーンには「逆行」の重みも見えてくる。
つまり、久美子には「吹部には入らない」という気持ちがまだここにある。
実際、このあとの秀一との会話で「(吹部に)入ろうと思ってたけど、やめることにした。」と一度やめる決断に落ち着きます。
麦茶
続いて、麦茶のシーンです。
一見普通のシーンですが、ここにも久美子の葛藤が表れています。
このあとに出てくる牛乳のシーンと合わせて、ユーフォ作品全体の中でも私が特に好きなシーンの1つです。
この麦茶、最後まで飲みきっていないんですね。
飲まないでもなく、飲みきるでもない。吹部に入らないでも、入るでもない。この絶妙なバランスを見事に示しているシーンです。
「吹部に入ろうかな」という「順行」する気持ちと「吹部に入るのをやめる」という「逆行」する気持ちが入り混じっています。
また、このシーンで久美子が吹奏楽を始めるきっかけとなった久美子の姉、麻美子が帰ってきているという話をしているのも、この葛藤を表すシーンに「順行側の重み」として効いているような気もします。
ベッドと楽譜
ここは少し余談っぽくなります。3期でも似たようなシーンがある、ということで話を載せました。
ここで見事だと思うのは、久美子が読んでいる楽譜集(?)に「大吉山北中学校」とあるのですが、この学校名がこのあと滝昇の登場シーンにも出てきます。
この場面、神社で滝昇が遭遇したカップルにオタク語りをしたあと、音楽プレーヤーに「大吉山北中学校 府大会」の文字が映し出されます。
このシーンだけで、
「滝昇が吹奏楽に精通していること」
「滝昇と麗奈(久美子)とはなんらかの関係があること」
がわかります。
この短時間にこれだけの情報量が詰まっていたんですね。
地獄のオルフェ
そして、先ほどのシーンですが、久美子が楽譜を読むとともに『地獄のオルフェ』が流れることによって久美子の吹部への熱の高まりを表しているようにも思えます。
ここからの一連のシーンはセリフがなく、一見そうでもないように見えるのですが、実は結構重要な気がしています。
というのも、このシーンが久美子にとっての順行と逆行のバランスの転換点でもあるからです。
実際、上に示した通り、このシーンの前後で久美子がベッドの上にうつ伏せだったのが仰向けになっています。
うつ伏せ=「逆行」
仰向け=「順行」
だとするならば、『地獄のオルフェ』は、
「逆行」側の重りを急激に取り外すことで、一気に「順行」側に傾かせている
ようにも見えます。
つまり、久美子はこのシーンを始点とした、吹部入部へのベクトルを伸ばし始めることになります。
牛乳
さて、地獄のオルフェのシーンを終えて、今度は久美子が牛乳を飲んでいる場面です。
先ほどの麦茶は途中で飲み残しており、それは久美子の吹部入部を決めかねた葛藤を表しているのでした。
対照的に、この場面では牛乳を飲み干しています。牛乳を飲み干したことは、順行側への傾き、つまり久美子の吹部入部への決意の表れが読み取れます。
麦茶ではなく牛乳なのは、単に朝だからなのではないかと思いますが、とても日常に溶け込んだモチーフの使い方だと思います。
この対比がとても綺麗で、大好きなシーンです。
吹部入部への決心を固めた久美子。「久美子~朝ご飯は~?」と聞かれるも「要らない」とバッサリ切り捨てる。
逆行の重みがなくなって、久美子の言動にも軽やかさ、ダイナミックさを感じます。
改札 (行き)
『地獄のオルフェ』が流れ、牛乳を飲み干すことでさらに順行側にバランスが傾きます。
帰りのときの改札では、葉月に声をかけられ、改札の途中で止まっていました。それが葛藤を表しているという話でした。まだそのときは、逆行の重みがそれなりにあったということです。
しかし、行きの改札ではどうでしょうか。上に載せた通り、止まることなく右方向へ進んでいきます。
電車 (行き)
帰りの電車では、右方向へ進むことで順行に傾きつつも、下り方面電車に乗るという逆行の重みがありました。
しかし、地獄のオルフェと牛乳、改札を止まることなく通ったことで、順行のバランスに強く傾き、その結果上り方面電車に乗って右方向に進みます。
この時点で、既に吹部入部が決まっていることが読み取れます。
まとめ
まとめます。さて、このあと実際に緑や葉月たちと会話をする中で、吹部への入学を決意したことが判明しますが、それはこれら描写の流れで手に取るように分かる。
それは久美子の心象(葛藤)が順行と逆行のバランスで構成されており、そのモチーフが反転され、繰り返される形で用いられることで、順行と逆行のバランスの時間変化が見て取れるからです。そしてそのモチーフは久美子の日常生活の中に溶け込んでいる。
ユーフォ1期1話はこの構成やモチーフのピックアップの仕方がとても美しく、『響け!ユーフォニアム』の顔といえるような話になっていると思います。
3期のモチーフ
さて、これまで1期1話の構成についてお話してきました。
私は以前から上記のようなモチーフの用いられ方に注目していたため、今回、3期1話を見て興奮が止まりませんでした。
3期の1話でもこれらのモチーフが繰り返し用いられていたのです。
ベッドと楽譜
うつ伏せ状態から起き上がる久美子。
手元には楽譜があって音楽を聴きながら起き上がります。
このシーンを見ると、1期の『地獄のオルフェ』のシーンが想起されます。
1期では帰ってきたあとにうつ伏せになっていたので、そこから起き上がるということはやはり「再開」の印象を与えますよね。
余談
牛乳
そしてこの牛乳です。
ちゃんと飲み干していて、感動しました。やはりこのモチーフは強力で、「順行」のイメージを強く印象づけるものになっています。
ところで、ここので父親のいうセリフで気づいたのですが、3年生ということで受験の話も入ってきそうですね。一生吹部の話だけしていて欲しいものです。
こちらは1期との対応はありませんが、「順行」の重みが乗っていて、「再開」の印象を与えます。やっぱり足。足は口ほどにものを言います。
信号
1期と違い、緑がボタンを押すこともなく、信号が青になり、そこを久美子が突っ走ります。やはり順行への傾きがあります。
ところでここのシーンの信号、赤が一瞬だけ映り込むのですが、そこで一時停止するのが困難なほど短いです。これも意図的なものなのかもしれません。
逆行?
ここのタイトルが出ているシーンですが、先ほどの「左=逆行」「右=順行」の話を汲むと、左に歩いているので、逆行しているように見えます。
さらにこのあとにも麗奈と再会したあとで左向きの上り方面電車に乗ります。
こう見ると、「再開」したはずなのに、逆行していて違和感があります。
一旦置いておいて先を見ましょう。
余談
ヤバいメタファーが盛り込まれていますね。ナニとはいいませんが。
北宇治カルテット=順行
葉月と合流しても左奥の方に逆行していきます。
しかし、左向き成分、すなわち逆行の重みが減ったとも考えられます。
ここから順行に傾いていくのでしょうか?
さらに先を見ます。
麗奈と久美子、そして葉月が改札を右に出る、つまり「順行」して緑と再会することになります。
ここでようやく順行し始めます。
すなわち、北宇治カルテットが揃うことで初めて「順行」するという仕掛けになっていました。
『響け!ユーフォニアム』を再開するのであれば、この4人からという思いがあったのかもしれません。
『響け!ユーフォニアム』、再開
そしてこのシーンはこれまでの話を汲んでいるようにも見えます。
ユーフォは最初、久美子が麗奈に余計なひとことを言ったところから始まっていて、それは久美子が吹奏楽から自身を遠ざける理由の1つでもありました。それは「逆行」です。
しかし、高校に入って葉月と緑と出会った。それが吹奏楽を再開する、つまり「順行」するきっかけになっていました。
この一連の流れが、上記の3期1話のアバンに組み込まれていたと考えることができると思います。
そして、話は変わりますが、
先ほどの4人が右へ歩くのシーンを普通に映すよりも、まず脚を映す。脚へのこだわりの強さたるや。
終わりに
今回の記事は以上になります。
「ユーフォは1期1話がすごいんだよ!」というのを各方面に言い続けてきましたが、それをようやく記事の形に出来たという意味でもとても満足感があります。
皆さんに読んで、理解していただけるかはわかりませんが、読んでいただいた方たちには、自分のこのエネルギーだけでも伝わればいいなと思います。
改めて、『響け!ユーフォニアム』3期1話、最高でした!
2話以降も楽しみにしております。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
なお、用いた画像は
『響け!ユーフォニアム』,©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会
『響け!ユーフォニアム』,©武田綾乃・宝島社/『響け!』製作委員会2024
より引用させていただきました。